制約がアイデアを生み、ゲームを完成させる

イデアを思いつくためのテクニックとして、なんらかの制約をあらかじめ自らに課してしまう、という方法がある。その制約の中でゲームを面白くするにはどうすれば良いかを考えることで、今までとは違った発想が生まれることが期待できる。また、その制約を逆に活かす方法を考えることで、アイデアの独自性を高めることができる。

制約とはどのようなものが考えられるだろうか。例として考えられるのは、ゲーム制作コンテストであるゲームジャムでのフォーマット、ルール、テーマだ。多くのゲームジャムでは、投稿できるゲームになんらかの制約を設けることで、参加者がその制約内にフォーカスしてゲームを作れるようにしている。

'Different Game Jam Formats' 1 というビデオの中では、その制約のタイプとして以下を挙げている。

  • ツール:利用できるゲームエンジンなどを規定する
  • アセット:ゲーム内で利用可能な画像などをあらかじめ与える
  • ビジュアル:解像度や色数を制限する
  • ゴール:「より多くのものを集める」などゲームの目的を規定する
  • インタラクト:「2つのボタンしか利用できない」などプレイヤーがゲームとインタラクトする手段を制約する
  • ジャンル:「プラットフォーマー」「ローグライク」などのジャンルを規定する
  • イムリミット:一定時間内にゲームを完成させる

イデアを生み出すために役立つ制約としては、インタラクト、ビジュアル、ゴールあたりだろうか。

インタラクトに関する制約としては、利用可能なボタン数を限定する、マウスだけを使う、キーボード全体を使う、ツインスティックなど、入力に用いるデバイスに制約を加えるのが一般的である。使えるボタンが限られていると、そのボタンにどのようなアクションを割り当てるかを熟慮する必要がでてくる。既存の方向キー+2ボタンを使っているゲームをワンボタンゲームにしなければいけない、などの無理難題をふっかけることで、強引な解決策を生み出す過程で、新たなアイデアが生み出せる可能性がある。

ワンボタンゲームについては、個人的に大量に作った経験があるので、ワンボタンにどれだけ多様なアクションを入れ込めるかについての記事 2 を書いた。動作のバリエーションだけでなく、地形やアイテムとの組み合わせなどを工夫することで、一つのボタンが生み出すインタラクションに対して、かなりのバリエーションを持たせることができる。

ビジュアルに関する制約は、基本見た目に影響があるだけでゲームのルールなどに影響を与えたりしない。だが、16x16ピクセルなどの非常に少ない画素数であったり、縦1ラインしか許容しない実質1次元のフィールドだったり、という極端な制約が与えられた場合、それを打破するためのアイデアが求められることもある。過去には、出力として1x1ピクセル2色のディスプレイしか許さないゲームジャム 3 もあった。

1次元のフィールドのゲームは、古くは1行しか表示できないポケコンなどのハードウェア制約のために強制的に生み出されていたこともあった。1次元という制約が、どのようなプリミティブなゲームを生み出すことができるかについての記事 4 も前に書いた。

ゴールについては、ありきたりのゴールを設定するだけではアイデア発掘にはつながらない。「自身を破壊せよ」「犠牲を払え」「勝つために敵を利用しろ」のような特殊なゴールを持つゲームを考えることで、あらたなゲームが発想できる。ちなみにこれら特殊なゴールはGame Jam Theme Generator 5 から出てきたものだ。このジェネレーターはゴールに限らずいろんなゲームジャムのテーマを出してくれるので、アイデアジェネレーター同様に発想の手助けに使える。

ツール、アセット、ジャンル、タイムリミットなどは、アイデア発想のためというよりは、限られた時間でゲームを完成させるためのものだ。ツールやアセットの選定に時間をかけることなく、決まったジャンルのゲームを、タイムリミット内に作る。このように作り方を定式化することで、ゲーム本体の制作にフォーカスして素早くゲームを作ることができる。

もしあなたがゲームをたくさん作ることを目指すのであれば、自分なりの作り方の定式、レギュレーションを決めるのも良い手だ。作るもの、作り方をパターン化して、開発にかかる手間をなるべく減らすのだ 6

上記のビデオには含まれていないが、ゲームのバイナリやソースコードのサイズに制約を加えることも多い。13キロバイト以内のWebゲームを作るjs13kGamesなどが有名である。ゲームジャムではないが、古くマイコンの時代には、1画面に収まるソースコードでゲームを作る 7 という投稿プログラムもあった。

限られたサイズでゲームができているということは、その中のルールやメカニクスもかなり絞られているわけで、そのような制約の元できている面白いゲームは良質なアイデアの宝庫である。ただ、自分で作る際のサイズ制約はどちらかというと単なる足かせにしかならず、早期の完成には寄与しない。なので純粋にサイズの制約を乗り越えるのが楽しい、という人にしかおススメはしない。サイズ圧縮のためのライブラリやテクニックは大量にあるので 8 、これらを覗いてみて面白いと思えるか、あなたの適性を測ろう。

ゲーム制作に対していくつかの制約を課すことは、新たなアイデアを発想したり、素早くゲームを完成させることに役立つ。あまりにきつい制約を加えると、今度はそれを乗り越えるのが苦しくなるので、自分の感性に合う制約を見つけて、うまく活用しよう。

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