4/17にTokyo Indiesでシューティングゲーム (STG)のアイデアを考える話をした。
プレゼンのスライドは以下の通り。でもほとんど口頭で話したので、このスライドだけ見ても何の話か分からない。なのでその補足を書こうと思う。
「撃って」「敵を倒す」ゲーム、それがSTG。当たり前である。でも本当にそれだけだろうか。
例えば「撃って」「四角を作る」ゲーム。これは何か。
画面上から迫る謎のブロックにブロックを発射して、四角にして消すゲーム、クォースである。でははたしてクォースはSTGか。本家が「シューティング・パズルゲーム」と言っているので、STGであろう。ならば「〇〇する」は「敵を倒す」でなくてもSTGであるはずだ。
そういえば、私は今までいろんな「〇〇する」STGを作ってきた。
- 「撃って」「敵をくっつける」ゲーム、TUMIKI Fighters
敵を倒すとその敵が落ちてくるのでそれを自機で拾う。するとその敵が自機にくっつき、敵に反撃を始める。どんどん敵をくっつけていくと、最終的に自機がボスよりも大きくなって、とんでもない火力で敵を圧倒できる。「くっつける」というアイデアをSTGに取り入れることで、ちょっと変わったSTGになった。塊魂+スカイキッドでもある。
- 「撃って」「敵を落とす」ゲーム、Mu-cade
ムカデ状の自機と敵がいて、自機のショットを当てて敵を吹き飛し、ゲームフィールドから押し出して落として倒す。当時はまだ目新しかった物理エンジンをSTGに取り入れた。
このように「〇〇する」を「敵を倒す」から別の内容に変えることで、ちょっと新しいSTGを作ることができる。「〇〇する」に何が入るかを考える、というのが、ゲームのルールやギミック、メカニクスを考える上での補助線になる。
ゲームフィールドにはライフゲームと、そのセル上を移動する敵がいる。自機はグライダーと呼ばれる、斜め方向に飛ぶライフゲームのパターンを発射し、それがフィールドのライフゲームに当たるとそこからセルの色を変えて汚染していく。ボタンを放すとその汚染されたセルと、そのセルの上にいる敵を破壊する。ライフゲーム+STGの組み合わせだ。
- 「撃って」「同色を貫く」ゲーム、COLOR ROLL
色分けされたバーが左右に移動しているので、色が揃った瞬間に撃つ。色を揃えるレイディアントシルバーガンや、ガンフロンティアのラスボスの回転遮蔽壁の隙間狙いあたりが発想元だ。
- 「撃って」「誘爆させる」ゲーム、CRISS CROSS BOMB
横向きの爆弾に当てると横方向に、縦向きの爆弾に当てると縦向きに誘爆する。なるべく多くの爆弾を巻き込みつつ、縦方向から自機の方に飛んでくる爆風をうまく避ける。
- 「撃って」「崩す」ゲーム、RAID
自機は高層ビル群に向かって降下していて、そのままだとビルに当たる。ビルの中腹を狙ってに爆弾を斜めから当てると、ビルを崩すことができる。
- 「撃って」「戻ってきてやられる」ゲーム、HAVE IT COMING
自機のショットで上空の敵を倒せるが、ショットはそのまま放物線を描いて落ちてくる。これに当たると自機もやられるので、むやみやたらに撃つと危険だ。しかし、ショットが地面に落ちるとボーナスアイテムになるので、高得点を狙うならむやみやたらに撃って、気合で避けることが重要となる。
このように、撃つ目的、撃つことで起こる結果やリスクとリワードを工夫することで、新たなゲームを作ることができる。「撃つ」という行為を何のためにどのようなタイミングで行うのか、ということをプレイヤーに考えさせることで、新たな楽しみ方があるSTGを作ることができる。
ただしこれは全てのSTGについて考えるべきではない。特に撃つことにリスクを持たせることにはかなり慎重になる必要がある。敵を破壊する爽快感を前面に押し出したいのであれば、弾は撃ち放題、敵は壊れ放題にすべきで、そこに駆け引きを持ち込む必要は無い。怒首領蜂で敵を残してコンボをつなぐためにショットを小出しにするとか、斑鳩で同色の敵を撃つためにタイミング良く単発弾を撃つ、みたいなギミックはとても面白いが、これにストレスを感じるプレイヤーもいるはずで、全てのSTGがそうあるべきとは思わない。
- 「撃って」「干渉する」ゲーム、COUNTER B
メタルブラックやGダライアスやボーダーダウンなどで見覚えのある干渉球を単体でゲーム化した。自分と敵の攻撃がぶつかり合ってせめぎあうシチュエーションはたまらないものがある。
- 「撃って」「まとめて倒す」ゲーム、THROW M
プーヤンで風船で降りてくる狼を肉でまとめて倒すところが好きで、そこだけ楽しみたかった。まとめて倒すと高得点は、昔ながらの伝統的なゲームルールといえる。
- 「撃って」「遠くの敵を倒す」ゲーム、MORTAR
セガのヘビーメタルが元ネタである。ヘビーメタルは縦スクロールシューティングで、画面外の敵を遠距離ミサイルで破壊できるという画期的なシステムがある。
このように他のゲームのフィーチャーの楽しさを借りるのも手である。このゲームのこのフィーチャーが楽しかったという思い出を心に、愛のあるオマージュをしよう。
「撃って」「爆発させて敵を倒しながら爆風で自機の軌道を修正して敵を避ける」ゲーム、BOMB UP
「撃って」「敵の戦車を破壊するけど地面に穴をあけることもできてそこで敵弾を避けられる」ゲーム、GRENADIER
「撃って」「ついでにジャンプして地面に障害物ができるけどアイテムを取ると別の物を撃って障害物を破壊できる」ゲーム、R WHEEL
このように、撃つという行為にあまりに多くのギミックを詰め込むとプレイヤーが混乱する。小さなゲームならありだが、一般的なシューティングゲームでは避けた方が良い。
こういった「撃って」「〇〇する」というキーワードで考えたアイデアは、STGを作るうえで何の役に立つか。例えば、あるシューティングゲームを代表するコアメカニクスを考えるのに役立つだろう。ここでいうコアメカニクスとはメタルブラックでの解放ビーム、レイディアントシルバーガンにおけるチェーンボーナスなど、そのゲームを代表し、特徴づける仕組みのことを指す。インパクトのあるコアメカニクスを設定することで、ゲームの差別化に役立つ。
また、特殊なギミックを持つステージやボスを考えるのにも活用できる。ゲーム全体を通じて適用されるコアメカニクスではなく、特定のステージや、特定のボスなど、ゲームの部分で発生する仕組みにこれらのアイデアを取り入れることで、ゲーム展開にバリエーションを持たせることができる。例えば、グラディウスシリーズはステージごとにコアとなるギミックを持つことで、ステージごとに新たな体験をプレイヤーに提供している。
「撃って」「〇〇する」を題材にシューティングゲームのアイデアを考える話をした。この記事を見た方々に、ちょっと変わったシューティングゲームを作ってみるのも面白いかも?と思えてもらえたらうれしい。シューティングゲームというジャンルの枠にとらわれず、自由な発想でゲームデザインに挑戦することが、シューティングゲームの持つ可能性を広げるのに役立つはずである。シューティングゲームにはこんな楽しさもあるのか、という新鮮な驚きをプレイヤーに届けることで、よりシューティングゲームファンは広がっていく。シューティングゲームは長い歴史を持つジャンルである。だからこそ、その面白さやポテンシャルを、次の世代へと継承していければと思う。