抽象的ゲーム: 活用されていないそのポテンシャル

抽象的ゲームに関して面白い記事があったのでちょいと引用。PCやゲーム機が高性能になるにつれて、ローレゾで記号的な表現のゲームは絶滅しかかっているが、実はまだ大きなポテンシャルがあるんじゃねーのという内容。

Except for a few torchbearers like Rez and Frequency , games have gone the way of increasingly representational graphics and gameplay, often trying to achieve the look and feel of movies or cartoons.

RezやFrequencyなどの稀有な例外を除いて、ほとんどのゲームは映画やアニメ方向、写実的な表現へとつき進んでしまっている。

Today, abstraction has become the biggest area of untapped potential in game design, and there's a few ideas that some of the early video games began to suggest and explore before more advanced technology came on the scene.

でもまだ技術的に未熟だったころの抽象的なビデオゲームから得られる、いくつかのアイデアがあるのではないかとのこと。

と、ここまではいいのだが、この後の主張がいまいちぴんとこない。抽象化は単純化とは違うとか、チェスや囲碁などのボードゲームは抽象的だとか、まあそれはそうなんだけど、それがどういったポテンシャルにつながるのかよくわからない。

一番最初の主張はまあ分かりやすくて、

1. Learning the game can be part of the game.

the figuring out of a game can be made as interesting as any puzzle the appears within the game itself.

抽象的でぱっと見よく分からないゲームのルールを学ぶことにパズル的な面白さがある、ということだ。ディグダグフォゾンみたいな、そもそも舞台装置からして突拍子もないゲームは、そのゲーム世界になじむまでの過程が楽しい。テトリスとかドリラーみたいなアクションパズル系も(パズル系にパズルの面白さがあるというのも妙な話だが)そうだね。

抽象的なゲームは、特にゲームを個人製作している人間にとって非常に重要だ。だって絵を描いたりポリゴンモデルを作ったりする必要がないんだもの。「それは手抜きじゃねーの」という主張には「その通り」と答えよう。1つのゲームにかけられる時間と気力は有限なんだから、どっかで手を抜かなきゃ。

まあ別に手を抜くところはそういった写実的表現部分である必要はない。おれの超絶なドット絵を見よ!という主張の人はシステムなどは既存のものを使いまわして鬼のドット打ちをすればいいし、最高のストーリをみせてやるという人にはRPGツクールAVGツクールがある。抽象的なゲームに走る人は、ゲームシステムで差別化しようという人が多いはずだから、やっぱりプログラマが一人で全部作ろうという古きよき時代の伝統的な体制が多いかな。

近年の抽象的ゲームの代表作として挙げられるRezを見ていると、斬新なシステムだけではなくて、斬新な表現形式を主張したいという方向に注力する場合もあるだろう。現実とは違った世界を構築してその世界への没入感を楽しむもの、かな。Rezとかテンペストとかはワイヤーフレームのトンネルエフェクトでトランシー、とかいう方向だけど、TGM(アリカのアホみたいに速いテトリス)のデスモードをひたすらやりこんでいる連中はあのスピードに毒されているわけで、没入感にもいろいろありそう。

抽象的なゲームを作る難しさは、システムなり表現形式なりが斬新じゃないとダメ、というところにあると思う。ありきたりなシステム、表現を抽象化すると、できあがるものは単純化された習作になるわけで、どっかで差別化しないといけない。これだけ既存のゲームが氾濫している今の世で、差別化せよと言われてもそうそう思いつかないよね。

1つの安直な逃げ道としては、もう忘れ去られた過去のゲームを発掘してきてアレンジすることだ。これなら過去の豊富な資産を踏み台にして新たな作品を作ることができる。踏み台にする作品の選定が難しいってのはあるけど。フィーバロンを発掘している私もどうかと思うしなー。でも好きなんだもの。

この手法でお手本にすべきは、パックマン vs.、かな。

これがプロの技だね。こういった切り口を見つけて、システムとして練りこむ技術が必要。頑張る。