統計でゲームはデザインできるか

「その数学が戦略を決める」(amazon:その数学が戦略を決める)の文庫版を読んだ。ひどくざっぱくに言うと、ある決定をするのに、専門家の勘に頼るのでなく、無作為抽出テストなどを使ってデータに基づいて決めたほうがいいよという話。

無作為抽出テストの面白い応用としては、Google Website Optimizerがある。

あるページから目的のページにユーザをナビゲートしたい。でもそのためにはどういったタイトル、テキスト、レイアウト、イメージがベストか分からない。そういったときは、とりあえず思いつくいろんなバリエーションのページを作っておいて、それらをWebsite Optimizerに投げればいい。Website Optimizerがそれらバリエーションをランダムに訪問者に見せて、どのページが一番ユーザを目的のページにナビゲートできたかを計測してくれる。なので、その一番のページを選択すれば、ユーザの体験データに基づいた最適なページが労せずして作れる、というわけだ。

こういった無作為抽出テストみたいのをゲームデザインに応用することはできないのかね。例えば、訪問者にちょっとパラメタの違うゲームをランダムに見せて、一番評判の良かったゲームを生き残らせることでゲームを最適化する、みたいなこと。これが自動的にできれば、デザイナが苦労するパラメタ設定を、デザイナの勘でなく、ある程度ユーザテストのデータを根拠として決定できると思うのだが。

ゲームのバリエーションに対する無作為化した比較ユーザテスト、みたいのは商用ゲーム開発会社ならおそらくやってるような気がする。MMORPGなんかだと、ユーザの行動をネットワーク越しに大量にロギングして、それらの統計情報をゲームバランス調整に役立てているはずだ。本当はどんくらいやってるのかとか、どんくらいシステマティックにやってるのかとかは、分からんけど。

こういったプレイヤーの行動に関する統計を知っておくことはゲームデザイナにも役立つよ的な記事もある。

この記事も収集したデータをどうやってゲームデザインに活かすか、みたいなところまでは踏み込んでないけど。もうちょっと具体的な内容に触れた記事が見たいところだが、見つからなかった。

Webサイトの最適化と比べて、ゲームの最適化はいろいろと難しい点もあるとは思う。調整すべきゲーム内パラメタは多様で微妙な変化がユーザ体験に大影響を与えたりするし、ユーザがそのゲームを面白いと思ったかどうかみたいな指標は定量的に測るのが難しそうだ。でもこの辺をちゃんと測定し、最適化を自動化できれば、ゲームデザイナが悩むいくつかのポイントを自動的に解決することができるかもしれない。

もっと言えば、レベル(ステージ)デザインの自動生成技術との組み合わせで、とりあえずプレイヤーに神レベルからクソレベルまでいろんなバリエーションのレベルを遊んでもらって、ちゃんと遊んでもらえるレベルのみ生き残らせていく、みたいなゲームデザイナ職務放棄的なアプローチも取れるかもしれない。ただ大量のクソレベルを押し付けられるプレイヤーはたまったもんじゃないので、少なくともある程度の回数遊んでもらえる程度には洗練された自動レベルデザインエンジンは必要だろうけど。

個人レベルのゲーム開発者ができることだと、プレイヤーから送ってもらったリプレイデータを使ったゲームの洗練化くらいが入り口になりそうだけど、こういったことをある程度簡単かつシステマティックにする方法ってあるのかしらん。