ユーザモデルに基づくゲームの作り方「「ヒットする」のゲームデザイン」

オライリーの方から献本いただいて読んでみた。ゲームのユーザであるプレイヤーのモデルに焦点を当ててゲームデザインを考えようという内容、なのだが、実際はプレイヤーのさまざまなモデル化方法から、ゲーム、インタフェース、世界のデザイン、各ゲームジャンルごとの分析など、けっこう多岐にわたる話題を扱っているので全体を一言で説明するのは難しい本だ。無理やりまとめると、プレイヤーを思考/感情、判断/認知、ハードコア/カジュアルの3軸8タイプに分類したうえでのゲームデザインに関する考察を行っている本。

その8タイプのうち、私のような昔ながらのスコア至上主義の古典ゲー、アーケードゲーム派は「思考判断型(征服者)」の「ハードコア」(本の中の分類記号だとH1)に含まれるらしい。

たいていの場合、H1プレイヤーは自分自身のチャレンジに打ち勝つことに関心を持っているように思える。「パンプアンドプレイ(クレジットでコンティニューできる仕組み)」の導入以前のアーケードゲームのプレイヤーは、自分のスコアを上回ることを競っていた。

調査に基づくこれら各タイプのプレイヤー数の分布や、各タイプに向くゲーム種別などの言及はもちろんあるが、だからどのようにデザインすべき、という指針までは言及されてない印象だ。

11章以降のジャンル別説明においては、アーケードゲーマー好物の縦シューについてもちゃんと言及がある。対象ユーザ層はもちろんH1と書いてあり、弾幕シューについても触れられている。

現代版は新しい技術を使って弾丸で画面を埋め尽くす。これら銃弾のパターンは大量のスプライトで描かれ、現代の縦スクロールシューティングプレイの特徴を、シューティングから回避へと変えることに成功した。弾幕系シューティングという言葉が、これらのゲームの説明に用いられている。

現代版は「首領蜂」(ケイブ、1995年)によって明確にされ、小規模だが非常に熱心な市場を形成し(特に日本のタイプ1プレイヤー)、この古典的ゲームジャンルの再登場を導いた。

ただ、初代蜂が先駆けかはちょっと疑問だよなー。初代蜂は後ろから敵が出てくることもいとわない伝統的東亜系シューだからな。そのあとにはちゃんと怒首領蜂ガレッガには触れているのでまあいいが。

今日主要のジャンルであっても、いつかは飽きられるのであり、そう考えると縦スクロール(シューティング)は将来の可能性がある、最も魅力的なレトロなジャンルなのだ。

とまあ縦シューに対してはなんか好意的なコメントがあってうれしいね。

そのほかにも、プレイヤーのフロー体験を生みだす難易度設計、プレイスタイルが判断型か認知型かによる運に対する許容度の差、操作の複雑さを測定する「操作の次元」の指標、など様々な話題がもりこまれている。いろいろな切り口からのゲームデザインに関する知見が含まれている点は面白いが、そのためII部以降の内容は若干話題が散漫な印象も受ける。最初に述べた3軸8タイプの分類に関する話題は4章にまとまっているので、まずはその辺から読んで面白いかどうかを判断するのがいいかと思う。