プレイヤーを楽しくさせるための演出を加えてゲームを「ジューシー」にするという用語の適切な訳語が欲しい

ゲームはその根幹のルールが楽しければそれで十分、見た目は最低限、音なんて無くて良い、ということに同意する人はほとんどいないと思う。ゲームはそのベースとなるルールの他に、それを盛り上げるためのプレイヤーの視覚、聴覚への刺激、演出が不可欠だ。

ゲーム開発者は、それら演出が適切になされているゲームのことを、ジューシー("Juicy")なゲームと呼ぶことがある。

例えば、この動画は単純なブロック崩しをジューシーにすることで、同じルールを持つゲームがどれだけ楽しくなるかを示している。

ジューシーなゲームにするためのジュースとしてどのような演出があるか、については以下の動画に詳しい。

要するに、ゲームに加えられるアニメーション、効果音、画面の振動、ヒットストップ、パーティクル、などなどをうまく活用できているゲームをジューシーと呼んでいるわけだ。ただそのジューシーという用語がかなり曖昧なことも否めない。

上記記事ではジューシーとは何を指すのかを深掘りしようとしつつ、確固たる定義にはたどりついてはいない。またその際にジューシーなカジュアルゲームの例として、PopCapのゲームを挙げている。PopCapのゲームの中でも、様々な演出でプレイヤーを褒め称えることが非常にうまいゲームとして、Peggleが思いつく。

Peggleは言ってしまえば画面上部からボールを打ち出して、それが釘に当たるのを眺めるだけのゲームだ。しかしなにかコンボを決めたりするたびに、ジミー・ライトニングというウザ……かわいいビーバーが出てきて、「ヤバい!」だの「革新的!」だのを叫んでゲームを盛り上げてくれて、非常にウザ……楽しい。その他にも、最後の釘に当たる直前にはドラムロール&ズームイン、当たると第九が流れるという過剰な演出が光る、とてもジューシーなゲームだ。

こういった盛り上げ演出をゲームの中にきちんと取り入れていきましょうということを、「ゲームをジューシーにしましょう」という言葉で説明できることはとても便利だ。ただ、このジューシーという用語、日本語のゲーム開発文脈において、説明無く使えるほど普及しているとは思えない。なので適切な訳語が欲しいのだが……あまり思いつかない。ゲームに「気持ちよさを演出する」「心地よさを加える」などが候補として挙げられので、この辺が落とし所かなあ。

ゲームの「手触りを良くする」というのも用語としてはそこそこ聞く。

が、これはもっとゲームルールと密接に関わっている要素な気がしていて、ジューシーとは別の概念のようにも思える。また、ソシャゲのレア演出のようなゲームルールとほぼ独立しているものも別概念のように思える。ゲームのルールからは適度に離れつつ、それを横から盛り上げる演出、それをジューシーと呼んでいる感じ。この辺、訳語だけでなくて元の用語の曖昧性もあって、なかなか難しいね。

文芸的diffでソースコードを解説する

literate-diff-viewer screenshot

プログラムの解説文章をソースコードに混在して表記し、そこから解説記事を生成する、文芸的プログラミングという手法がある。

文芸的プログラミングはソースコードに強く結びついた形でドキュメントを管理することができ、ソースコードの解説を記述するためには良い手法である。ただし、生成される解説記事はあくまでソースコードの記述順に沿ったものであり、プログラマの開発手順、実装順序に沿ったものでは無い。

ソースコードの解説は、そのコードが作られた順番に行われたほうが、プログラマの思考に沿って説明がされるので分かりやすい。そのような発想に基づいて提案された手法が、文芸的コミットだ。

コミットメッセージに、そのコミット内容を説明する文章を記述していくことで、コミットのヒストリーが解説記事になる手法だ。この方式だと、コミットというコードが改変されていく順番で解説ができるので、より分かりやすい内容にできる。

この方式の欠点は、コミットをかなりの注意を払いながら行う必要があることだ。後でその内容を解説記事にすることを考慮しながらコミットするのは、実装する際にかなりの負担になる。解説のために、完成後に改めてコミットを重ねていく方法もあるかもしれないが、それはそれで面倒だ。

なので今回は文芸的diffという手法を考えた。プログラムが出来上がるまでの複数のソースコードをファイルとして保持しておき、それらのファイルに対して解説記事の中からリンクを張る。記事がリンクの部分を表示するタイミングで、そのソースコードと直前のソースコードのdiffを表示する。具体的には以下のような解説記事になる。

このページを下にスクロールすると、画面左の解説に対応する形で、画面右にそれを実現するソースコード断片がdiffとして表示される。さらに、現在のソースコードで実現できる画面が右下に表示される。このようにすることで、実際にプログラムが出来上がるまでの工程を、解説・ソースコード・プログラム動作の3つを並列に見ながら確認できる。

この文芸的diff手法であれば、記事を作る側の負担もそこそこで、ステップバイステップで作り方を説明する記事が作れると思うのだが、どうであろうか。

文芸的diff手法での解説記事を作るためのコードは以下のリポジトリに置いた。

literate-diff-viewerの使い方についてもliterate-diff-viewerで作成したので、参照ください。

昔のゲームのBGMっぽいものを自動生成したい

昔ってのはゼビウスとかディグダグとか、1980年代前半までさかのぼるくらいの昔。この頃のレトロアーケードゲームのBGMは、4~8小節くらいの短いフレーズを繰り返すものがあった。

自作ミニゲームのBGMとしてそういったBGMが欲しい、できれば自動生成したい、というもくろみが前々からあって、いくつかそういった技術を探していた。

一つはWolframTones。セルラオートマタを切り出してメロディにする手法。これはお手軽でよさそうなのだが、16分音符で完全五度で往復するベースとか、昔のゲームでよく見るフレーズが再現できないのが弱点に見える。

最新のものだとOpenAIのJukeboxがあるが、これは楽譜ではなく音楽の波形を生成するものなので、レトロゲーム向けではない。

そこでMagentaだ。MagentaはGoogleがやっている、機械学習を音楽や絵に応用するリサーチプロジェクト。ブラウザで動かせる実装として、Magenta.jsが公開されている。

Magenta.jsは曲の楽譜を入力すると、それに続くフレーズを自動生成してくれる、MusicRNNを備えている。これにレトロゲームの短い楽譜を与えれば、それっぽい別の曲を作ってくれるのではないか、と思って、以下を試作してみた。

真ん中の「Generate」ボタンを押すと、画面左のフレーズを元に新たなフレーズを生成し、画面右に表示、再生する。メロディとベースの2トラックのみから成るシンプルなフレーズの生成だが、一応それっぽいものが作れているように思える。複数トラックを元のフレーズとして入力する方法が分からなかったので、それぞれ別々にフレーズを作成した上で、ベースがメロディと不協和音だった場合に調整(振動数が1~4くらいの比率になるようにするだけ)した。画面中央下のチェックボックスを外すとこの調整を行わなくなるので、より自由なフレーズが生成される。

Magenta.jsの使い方については以下の記事が詳しい。

Magenta.js組み込みのプレイヤーが同時発声できなかったので、そのへんはTone.jsを使って自力で再生している。あとフレーズの入出力はMMLが個人的に楽なので、mml-iteratorでパースしている。

後は効果音も似たような感じで生成できるといいのだが、MusicRNNはあくまでメロディを生成する目的なので、同じアプローチではできなさそう。

上の記事にスーマリの効果音の楽譜があるけど、ゲームの効果音って楽譜で見るとあまりに特殊なので、生成手法の関連研究とか無さそうな気がする。世の中の効果音生成ツールって、だいたいsfxrを祖とした波形生成ベースのものが多くて、楽譜として生成するものは見たことが無い。情報求む。

ゲーム作りをパターン化して1年で139個のミニゲームを作る

このページの上から139個が今年の分だ。こうして並べてみるのは楽しいな。ゲームをたくさん作ることでゲーム制作のスキルアップを!みたいな気概は無いので、ヤマザキ春のパンまつりのシールを集めるのと同じような楽しさだが。でも、作って、Twitterに放流して、いろんな人に遊んでもらって、フィードバックをもらう、というサイクルがたくさん回せたのは良かった。今年遊んでくださった皆さま方、ありがとうございました。

2,3日とかの短期間でミニゲームを作り続けるためには、作るもの・作り方をパターン化してほうが良い。今年は以下のレギュレーションで作った。

  • Chromeで遊べる恐竜ジャンプゲームのような、手軽にブラウザで遊べるゲームを目指す

  • 操作方法はスマホでの操作が容易な、ワンボタン、左右へのスライド、画面上のタップ、の3種類に限定する
  • 画面サイズは100x100を基本とし、キャラクタは6x6と小さくすることで、ドット絵を作るのを楽にする
  • キャラクタ以外は四角、線、円、パーティクルだけとし、凝った描画はしない
  • BGM・効果音は自動生成し、音周りの手間を減らす
  • ハイスコアを狙うだけの昔ながらのゲームとする
  • 1ゲームの時間は最大5分程度を目安とし、難度を少しずつ上昇させることでプレイヤーにミスしてもらう
  • 難度上昇は、プレイヤーが比較的理不尽さを感じにくい、ゲームスピードの上昇を基本とする
  • コードは単一のJavaScriptファイルで記述し、100~300行程度のサイズとする
  • コードをGitHubにコミットするだけで、GitHub Pagesから遊べるようにしておく
  • スクリーンショットを簡単に取れる仕組みを用意しておくとTwitterに放流しやすい

上記のような制約の元作り続ければ、コーディングからリリースまでは短時間で機械的に行うことができる。

問題はコーディング前のアイデア出しで、こればかりは定型化が難しい。

こういうゲームアイデアスロットマシーンの助けを借りるという手もあるが、それはそれで発想が限られてしまうという欠点もある。ゲームアイデア出しのパターン化については、引き続き考える必要がありそう。それをパターン化してしまうのは、ゲーム制作の一番楽しいところを食べ損なっているような気もするけど。

今年111のワンボタンゲームを作って分かった面白いゲームを作る方法

たくさん作ることかな!

上記のページに作ったワンボタンミニゲームの一覧がある。Twitterにゲームを放流した時に付いたFavとRTの合計でソートして、左上から多い順に並べている。なので、ある程度客観的に面白い順に並んでいる、はず。この上位に上がっているものをもう一度見直せば、面白いゲームを作る方法が分かるかも。

トラックに当たって2つの世界を行き来しダイヤを集めるゲーム。これは単純に異世界転生というワードに頼って面白さを出した感じだなあ。この辺の話は以下の記事に書いた。

ヒヨコを引き連れて弾を避けながらジャンプするゲーム。後ろに大量のヒヨコを引き連れていく達成感がお気に入り。あとヒヨコは多段ジャンプのリソースでもあるので、見た目だけでなくちゃんとルールに組み込まれている。あとフリッキー

赤い魚を避けて青い魚を釣るゲーム。赤い魚がいなくて青い魚が群れているタイミングを待つ釣りっぽさと、まとめて取れたときの「がさっと」感が良いのでは。あと釣り糸を投げ込んでいる感触も。

タケノコを取りつつ竹を刈るゲーム。押しっぱなしで竹の裏を通れる、というルールを追加した結果、竹の間を高速バウンドして竹を刈るという攻略が使えるようになった。これがなかったらだいぶゲームテンポが削がれたと思う。

雷を避けるゲーム。雷の挙動の面白さで一点突破。あと地面に達しなかった雷からボーナスアイテムが出るようにしたので、雷ギリギリのところで避けるモチベーションが生まれて、リスクとリワードのバランスが取れた。

下降スピードを調整して着陸するゲーム。これはみんながアーガスが大好きなだけだな。アーガスはアーケードだけでなくファミコン版もあるので苦しみの普及度が高くて良い。

数字を打って床を消すゲーム。ゴルフとビリヤードとゲートボールを組み合わせたような謎ルール+ワンショットで複数の床を消せる連鎖感、が相まって良かったのでは。あと物理挙動はなんとなく楽しいよね。

同色がそろった時に撃つゲーム。何かをズバッと貫くのは楽しい。この手のゲームは、タイミングのシビアさをうまく調整すること、失敗してもある程度見返りがあること、などゲームバランスの調整が肝だ。

反射板を使って弾を打ち返して反撃するゲーム。ボタン押しっぱなしで反射板が短くなるのがリスキーなのだが、それで反射した弾は大爆発を起こすというリワードが高く、バランスが取れたはず。リスク・リワードのバランスはミニゲームの命。

棒を伸ばしてピンに引っ掛けて登るゲーム。伸ばして引っ掛けるというワンボタンならではの挙動が分かりやすく楽しいのでは。ワンボタンで作り出せる挙動については以下の記事を書いた。

以上が上位10ゲーム。この辺のゲームを見ると、面白いワンボタンミニゲームを作るためには、

  • モチーフを提示してゲームと物語をリンクさせる
  • うまくプレイできていることを視覚的に示して達成感を増す
  • まとめて取る・倒すと高得点を楽しさの基本に置く
  • 物理挙動をボタンにリンクさせて操作の楽しさを出す
  • ゲームテンポを高めるためのルールを探す
  • 自然現象や幾何学などから面白い挙動を転用する
  • リスクとリワードのバランスを常に考える
  • 既存ゲームのモチーフやルールをうまく借用する
  • 既存ゲームはテレビゲームに限らず既存スポーツなども視野に入れる
  • 爽快感と緊張感のバランスも考える
  • ワンボタンという制約を活かしたインタラクションを取り入れる

あたりが大事かなあ。抜き出して抽象化すると当たり前のことばかりのような気もする。

ただ、リスクとリワード、爽快感と緊張感、難度曲線あたりのゲームバランスの調整については、言語化するのは難しいね。こればっかりはたくさん作って慣れていくしか無いようにも思える。あと、他の人に遊んでもらってハイスコアを報告してもらったりすると、自分の思っている適切なバランスが、世の中一般とどれくらい乖離しているかをある程度は確認できる。その情報をもとに自分の中の物差しを調整できるとさらに良いね。

その他、ミニゲーム開発関連では以下の記事も書いたので、気が向いたらぜひご参照ください。

ワンボタンゲームをたくさん作ったので、その作り方をおさらいしたい

English version: How to realize various actions in a one-button game

はじめに

自作ゲームライブラリcrisp-game-libを使ったミニゲームを最近たくさん作っているが、特に多く作っているのがワンボタンゲームだ。ここで言うワンボタンゲームは、レバーによる移動の他のボタンが1つ、といったものではなくて、純粋に1つのボタンしか操作に使わないゲームを指す。

ワンボタンゲームの利点は、操作が分かりやすく、タッチデバイスでも操作しやすい点にある。とにかく何かボタンを押せばそれがプレイヤーが取れる動作の全てであり、操作説明がほぼ不要である。またタッチデバイスでも画面中のどこかをタップあるいはホールドすれば操作ができるので、バーチャルパッドでよく起こる、ボタンを押した感触が無いので操作がしづらいという問題が発生しない。

欠点は、当然のことながら、動作にバリエーションを与えるのが難しいこと。レバーがあれば簡単に実現できる左右移動さえ、ボタンを押すと進行方向が反転する、というちょっと特殊な操作にせざるを得ない。

なのでワンボタンゲームを作る際に問題になるのは、たった1つのボタンによるゲームへのインタラクションに、どのようにバリエーションを与えられるか、という点になる。その点に関して、今まで作ったいくつかのワンボタンゲームを例に整理してみたい。

特殊な動作を取り入れる

ボタンを押した瞬間にプレイヤーが以下の動作を行う、というのがワンボタンゲームでは良く見られる。

  • 移動方向が反転する・90度回る
  • ジャンプ・羽ばたく
  • ショットを撃つ

ボタンで移動方向が反転する例としては、

THUNDER

というゲームを作った(スクリーンショットをクリックすれば、そのままブラウザで遊べます)。2方向に移動するだけのゲームであれば、障害物やボーナスアイテムなどを工夫して、ワンボタンゲームに仕上げることはできる。が、ワンボタンならではの特徴があるゲームとはあまり言えない。

ボタン操作で発生する動作を、通常のゲームではあまり見かけないものにすれば、ワンボタン操作ならではのゲームであることを、プレイヤーに強く印象づけることができる。

瞬間移動

CYWALL

プレイヤーが移動可能な点を画面上に用意しておいて、押した瞬間に一番近い点へ瞬間移動する。ワンボタンでテンポ良く移動できるのがこの動作の良いところである。

分裂

DIVARR

ボタンを押すたびにミサイルが分裂する。ボタンをバシバシ押すだけで攻撃力アップが楽しめるが、それを防ぐために撃ってはいけないものを混ぜるなどの工夫が必要になる。

選択

NOT TURN

JUMP ON

あるポイントで曲がる、床に飛び移るなどの動作を選択する。ここにどっちにいくのかを選択する場所・瞬間がある、というのがプレイヤーにはっきり分かる必要があるので、ゲームフィールドとその見せ方には工夫が必要である。

属性反転

NS CLIMB

ボタンを押すたびに属性、例えばN極とS極が入れ替わる。属性になにを用いるか、それが外界とどのように関わるかを考えるところがゲームの肝になる。

その他特殊なもの

LADDER DROP

左右に移動している床とはしごをタイミング良く落とす。落ち物ゲームのワンボタンゲーム化でもある。

NUMBER LINE

流れている数字を合計する。これはあまりに特殊で参考にならないが、ボタンに割り当てる動作はいくらでも考えられるという一例だ。

ボタン押しっぱなしの活用

ワンボタンゲームはボタンを押した瞬間に何かが起こるのが普通だが、押している間に継続的に何かが起きる、という動作をさせることもできる。

角度や距離を調整する

NUMBER BALL

ゴルフゲームでよくある操作だが、ボタンを押している間打ち出す角度が徐々に増えるので、ちょうどよいタイミングでボタンを放して打ち出す。このゲームは打ち出した数字と床の数字が一致すると床が消えるという謎のルールで、ゴルフとは差別化している。

FROOOOG

カエルが飛ぶ距離を、ボタンを押している時間で決定する。ワンボタンでプレイヤーを上下左右に動かすことは難しいということを強引に解決した一例である。

伸縮する

PIN CLIMB

ボタンを押している間、棒が伸びて、放すと縮む。伸びるだけでは何も良いことはないので、伸びたものがなにかに引っかって先に進めるなど、なんらかの地形と組み合わせて使われることが多い。

SQUARE BAR

幾何学図形と組み合わせると、伸縮だけで複雑な動きを実現することもできる。

TAPE J

伸ばせば伸ばすほど点が伸びるが、リスクも高まるようにするのも、リスク・リワードのバランスが取れて良い。

防御する・当たらなくなる

EMBATTLED

ボタンを押している間、砲弾に当たらなくなる。そのままだと戦車にひかれて終わるので、ある程度ひきつけたら防御を解いて上下に避けると、戦車同士が勝手に戦ってくれる。

REFLECTOR

敵弾を反射してくれる防御壁が常に下に付いているが、ボタンを押している間は強力な反撃ができる代わりに、防御壁が小さくなる。

BAMBOO

ボタンを押していると竹に当たらなくなり、竹の裏をすり抜けることができる。そうすると竹の間に入り込んでバウンドすることができるようになり、素早く竹を刈ることができる。

その他特殊なもの

CHARGE BEAM

エネルギーをチャージする。チャージ量をうまく調整することに意味があるゲームにしないと成り立たない。

LASER FORTRESS

薙ぎ払う。ショットを撃つの超強力な亜流。敵に味方を混ぜることで、超強力な攻撃が仇になるように調整している。

SHINY

雨が降る・晴れる。雨が降っている間は人が早く移動してくれるので、それを利用して早めに右端まで退避させる。あまりに特殊な動作で、他のゲームには転用できそうに無い。

複数の動作の組み合わせ

上記動作を組み合わせるのも王道の作り方だ。

SCRAMBIRD

羽ばたき+ショットや、

TILTED

多段ジャンプ+移動方向反転、

UP SHOT

ショット+停止など。

また、ある動作がゲーム内に複数の影響を与えるようにする手もある。

BOMB UP

これはボタンで爆弾を落とす・爆発させるという動作に加えて、その爆風でプレイヤーを吹き飛ばすという影響を与えるようにしてある。そのために爆発させる位置とプレイヤーの位置を調整することで、プレイヤーの移動を制御することができる。こうすることによってかなり複雑な動作をワンボタンで実現できるが、やりすぎると制御が難しくなりすぎるので、加減が重要になる。

回転運動との組み合わせ

角度調整に似ているが、プレイヤーや砲身が常に回っていて、タイミングよく飛び出したり撃ったりという、タイミング重視のゲームにする手もある。

ORBIT MAN

飛び出し方向が回転しているので、星がある方向にタイミング良く飛び出す。

ARCFIRE

砲身が回転しているので、敵を向いている時にタイミングよく撃つ。このゲームでは押しっぱなしで射程と攻撃範囲が調整できたり、発射と同時にその方向に少し前進するなど、いろいろな行動がワンボタンでできるようになっている。

地形の活用

入力によって動作にバリエーションをもたせるのが難しいのならば、プレイヤーの立っている地形によって動作が変わるようにするのも良い。

TURBULENT

ボタンでジャンプする、という動作に対しても、そのジャンプする地形を荒れた海面にすることで、タイミングによって飛び出す方向を変化させることができる。

SUB JUMP

画面下半分を海中、上半分を空中、とすることで海中ではボタンで上昇、空中ではジャンプと、複数の役割をボタンに持たせることができる。

アイテムの活用

地形以外にもアイテムを活用する方法もある。アイテムを取るとなにかのモードが変わるようにして、アイテムを取る・取らないという選択を入力の代わりに利用する。

MIRROR FLOOR

コインを取るたびに重力方向が切り替わる。次の床の位置をよく見て取るか取らないかを選択しないと、次の床に飛び移ることができなくなる。

LIFT UP

アイテムを取ると進行方向が変わる。左右のトゲトゲにぶつかる前に反転アイテムをうまく取りつつ、コインを集める必要がある。

REBIRTH

トラックにひかれて逆の世界へ移動する。トラックがアイテムであるかは議論の余地があるが、次のダイヤの位置を見てトラックにひかれるかひかれないかを選択する。

R WHEEL

アイテムを取ると下方向にレーザーを発射して、障害物のトゲを破壊する。このゲームはその他にジャンプすると下方向にトゲを生やすレーザーを発射する、トゲはぐるっと回ってもう一度プレイヤーのところに来る、アイテムはジャンプすることにより出現する、など複数のことがボタンを押すとジャンプするという動作に対して発生するようになっている。

さいごに

このように、ワンボタンだと大した動作バリエーションを作ることはできないだろう、と考えるのは早計であり、ここに挙げただけでもかなり多様なタイプのゲームを作ることができることが分かった。ワンボタンゲームの持つポテンシャルを活かして、今後も様々なゲームを作ってみたい。

ワンボタンゲームは操作が簡単であることが利点だが、それ故に思わぬ罠にかかる場合がある。それは、ボタンを連打するだけ・押しっぱなしにするだけでいくらでも点が入る、いわゆる永久パターンがあるゲームがたまに出来上がることだ。なので作った後に、必ず連打プレイ・押しっぱなしプレイを行うこと。本人が意図していなくても、そこそこの確率でそういうゲームになることがあるので注意したほうが良い。

あと大前提として、ワンボタンゲームであることと、そのゲームが面白いかつまらないか、ということに因果関係はない。そのため、そのゲームが爽快感・緊張感を備えていること、リスク・リワードのバランスが取れていること、などゲームとしての面白さはちゃんと追求しないといけない。その上で、そのゲームをワンボタンゲームに落とし込めるかを考えることは必要である。

ミニゲームに物語性を加えることで得られるコク

自作ライブラリcrisp-game-libを使ったミニゲーム作りは、まだ継続して行っている。

そんな中、最近作ったゲームの評判が良かった。

評判が良かった理由は、

のように、ミニゲームにちょっと物語性を入れ込んだところがウケたようだ。

私には作ったゲームにあとから物語性を入れる器用さは無いので、私の作ったゲームになんらかの物語性があったとしたら、それはその物語性を元ネタに発想したゲームだということだ。

今回は、

スタジアムでトラックにひかれるところから始まる異世界転生バトルが生まれるほど鉄板化したお約束、「トラックにひかれて異世界転生する」を元ネタに考えたものだ。

  • トラックにひかれて飛ばされた先が別の世界になるよう、2つの世界を左右に配置する
  • 左右の世界でそれぞれボーナスアイテムのダイヤを配置し、世界を行き来しつつダイヤを集めて点を得るようにする
  • トラックにひかれてゲームオーバーにするわけにはいかないので、代わりにダイヤを取り逃すことを終了条件にする
  • こうすることでどのトラックを避けてどのトラックにひかれるべきかの駆け引きが生まれて、なんとかゲームになる

という流れで作った。

というわけで、ミニゲームにおいても物語性を加えることでコクや深みを与えることが重要である、ということをいまさらながら再認識した次第である。ただ、一般的にゲームに物語性を加えるのは、凝ったグラフィックスやサウンドを施すことで行われることが普通で、低コストに作りたいミニゲームで行うことは難しい。今回は「トラック」「異世界転生」というミームを説明文に加えるという、極めて低コストな方法をたまたま思いついたからできただけであって、あんまり再現性がある手法にも思えない。

あと、

こういう物語性のかけらも無い、ゲームルールむき出しのミニゲームを作るのも好き、という個人的な嗜好もある。なんか、こういう素朴なゲームが面白くできると、ゲームルールだけで勝った!、みたいな謎の達成感がある、んだけど、この感覚ってゲーム開発者に普遍的なものなのかなあ。

なので物語性の重要性は再認識しつつも、ゲームルールそれ自体の楽しさを試行錯誤するゲーム作りをしたい、というスタンスはあまり変えずにまたミニゲーム制作を続けようと思いました。すごいどっちつかずの結論だけど、ゲーム作りは自由だからこれでいいのだ。