ゲーム開発におけるプロトタイピングの落とし穴

ゲーム開発に関する良質なアーティクルがあるLost Garden(http://lostgarden.com/)から興味深い記事2つ。1つ目はプロトタイピングについて。

ゲームのプロトタイプを作ることでそのゲームが良ゲーになるかクソゲーになるかを早めに見極めることは重要だが、その際によく陥る落とし穴として以下のようなものがあるとのこと。

  • うちのプログラマが言うには、彼のステキなDX9ゲームエンジンを作るのに8ヶ月かかり、その上に堅牢なアーキテクチャを築くのに4ヶ月かかるので、プロトタイピングが可能になるのは1年後だそうだ
  • そもそも苦労してプロトタイプなんか作ってもそのほとんどは捨てるんでしょ?時間の無駄だね
  • プロトタイプ作ってみたけど、なんかよくあるしょーもないミニゲームができただけなんですが……
  • このゲームサイコーに楽しいんだけど、オレ以外の全員がクソゲーって言うんだよね
  • オレの次回作は世界最高のオンラインアドベンチャーFPSなんだけど、プロトタイピングの仕方が分かりません!

彼の提唱する解決策は以下の通り。

  • 既存のゲームエンジンを使え。アーキテクチャなんてグダグダでいいから時間をかけるな
  • プロトタイピングは早めに頻繁にやれ
  • ゲームデザインの全体像にフォーカスしろ
  • 新規ユーザからのフィードバックを得るようにしろ
  • プロトタイピングを行うべき時期を見極めろ。ストーリなどのコンテンツを充実させるにはプロトタイピングは役に立たない

だいたい納得。

プロトタイピングの重要さはよくよく分かってはいるんだが、個人ベースの開発だとなかなかきっちりとしたプロトタイピングができることは少なくて、結局フルゲームを作るのと同じ作り方になってしまうことが多い。そういった作り方をしていると、出来上がるものはプロトタイプではなくて、単なる作りかけ挫折ゲームになってしまう。

ゲームデザインの全体像にフォーカスできるようになっているってのが、プロトタイプが備えるべきとても重要な性質なんだろう。そのためにはゲームの細部にこだわらず、そのゲームのポイントが分かるものを手早く作ることが必要とされる。きっちりとしたプロトタイピングは無理としても、核となる部分を早いフェイズで確かめられるようにゲームを作る、くらいはしたほうがいいかもね。

なぜゲームデザインは皆でシェアすべきなのか

もう1つは、思いついたゲームデザインはみんなに公開してフィードバックを受けるべきであるという話。

そんなもん公開したらパクられるじゃねーかってのが脊髄反射的にどうしても出てくるが、以下のような理由から、そんなこと心配する必要ないっていう主張がなされている。

  • ゲームデザインは単なる出発点で、それだけでゲームの出来が決まるわけではない
  • 本当にユニークなデザインはコピーするにはリスキーすぎる。成功するかどうかわかったもんじゃないから
  • デザインをシェアすることで、他人からのフィードバックによるすばらしい洗練が見込める

そもそもゲームデザインなんてものはそれ自体ではたいした価値がないんだから皆で公開すべきっていう主張、とまで言うといいすぎかなあ。まあでもゲームデザインを実際のゲームに結びつける部分に肝があるってのは分からんでもない。ゲームデザインという単語の定義にもよるが。

それでもゲームの核となるデザインを、そのゲームができる前に公開するというのにはどうしても抵抗がある。せっかく思いついたんだからそれを1番手で実現したいってのは誰にでもある願望だろう。あとパクられる危険のほかに、あるデザインを公開してフィードバックを受けておきながら、ゲームとして完成させられなかったときに申し訳ないとかいう、別の躊躇する理由もある。

なのでせめてある程度遊べる形まで整った、そういわゆるプロトタイプができてから、それを公開してフィードバックをもらうというのがやはり妥当ではないかと思うわけです。あー無理矢理前のエントリとつながった。いやつなげる必要は別にないのだが。